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足元に吹き抜けてく花びら

第6章 恋の始まり


「…帰ってくるの、楽しみにしてるね。」


そう答えると、千切は少しだけ笑った。


「うん。会ったら、ちゃんと話す。…隠してたことも、全部。」


通話は、やがて静かに終わった。
でも、英美子の胸には、まだ彼の声の余韻が残っていた。


サクラが膝の上で丸くなり、寝息を立てている。
その温もりの中で、彼女はそっと目を閉じた。


明日が、少しだけ待ち遠しくなっていた。



千切豹馬の帰国当日。
英美子は空港の入国ゲート前で、冷え込んだ空気に掌を包み、息を吹きかけながら待っていた。
フライト掲示板を何度も確かめては、彼の到着を静かに待ち続ける。


しばらくして――


「英美子!」


懐かしい声がゲート出口に響いた。
その声に反射的に顔を上げ、英美子は思わず叫んだ。


「豹馬!」


けれど、すぐに口を噤む。
どこにマスコミの目が潜んでいるか分からない。


千切は足早に彼女へと近づくと、自分の上着を広げて英美子を包み込むように抱きしめた。
突然の行動に、英美子は人目を気にして彼の腕の中でもがいたが、彼の腕は強く、温かく、離れることはできなかった。


「会いたかった…」


焦がれるような口調で、早口にそう告げる千切。
英美子はその胸の中で、ただ一言だけ返した。


「…うん。」


彼の言葉に、何も足すことができなかった。
ただ、その想いの深さに、胸が静かに震えた。


「顔がバレるとまずい。このままタクシーで、俺が取ってるホテルに行こう。」
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