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足元に吹き抜けてく花びら

第6章 恋の始まり


通話ボタンを押すと、少しだけ間を置いて、千切の声が耳に届いた。
いつもより低く、少しだけ迷いを含んだ声だった。


「…急にごめん。なんか、声聞きたくなって。」



英美子は、サクラを撫でながら微笑む。


「どうしたの? 何かあった?」


「いや…別に大したことじゃないんだけどさ。今日、練習中にまたミスってさ。コーチには怒られるし、自分にも腹立つし…」


彼の声には、悔しさよりも、どこか寂しさが滲んでいた。
英美子は、静かに言葉を選ぶ。


「そういう日もあるよ。豹馬が頑張ってるの、ちゃんと伝わってると思う。」


「…英美子って、ほんと不思議だよな。言葉が、すっと入ってくる。」


少しだけ沈黙が流れたあと、彼がぽつりと続けた。


「実はさ、数日休みが取れたんだ。だから…帰国しようと思ってる。」


英美子は驚きながらも、言葉を飲み込んだ。
彼の声が、少しだけ熱を帯びていた。


「会いたいって思った。…いや、ずっと思ってたけど、言えなかった。」


その告白に、英美子の胸が静かに揺れる。
画面越しの声は、遠くて近い。
彼の焦がれるような想いが、言葉の隙間から滲んでいた。
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