第6章 恋の始まり
英美子は、サクラを撫でながら指を止める。
彼がこんなふうに弱音を吐くのは珍しい。
少しだけ考えてから、返信を打った。
『それだけ期待されてるってことじゃない?』
数分後、また通知が鳴る。
『期待されるのもしんどい時あるよ。自分でも悔しかったし』
英美子は、画面を見つめながら、そっと微笑んだ。
彼の言葉には、苛立ちよりも、自分への悔しさが滲んでいた。
『でも、豹馬が悔しいって思えるなら、次はきっと決められるよ』
しばらくして、彼からの返信。
『…英美子って、時々すごいこと言うよね。ありがと』
その言葉に、英美子の胸が少しだけ温かくなる。
画面越しのやり取りは、たわいないものかもしれない。
でも、こうして誰かの心に触れる瞬間がある。
サクラが膝の上で丸くなり、静かに寝息を立てていた。
英美子はスマートフォンを伏せ、窓の外の夕暮れを見つめた。
今日も、誰かと繋がっている。
それだけで、少しだけ心が軽くなる。
夜の静けさが部屋を包む頃、英美子のスマートフォンがふと震えた。
画面には、千切豹馬からのメッセージ。
『今、通話してもいい?』
その一文に、英美子の胸が少しだけ高鳴る。
『もちろん』
と返信すると、すぐに着信が鳴った。