第6章 恋の始まり
英美子のスマートフォンが、控えめな通知音を鳴らした。
画面には「千切豹馬」の名前。
彼からのメッセージは、ほぼ毎日届く。
それは決して長文ではなく、時に一言だけのこともある。
けれど、その短い言葉の中に、彼の気遣いと温度が確かに宿っていた。
『サクラ、元気?』
『今日の夕焼け、綺麗だったよ。そっちも見えた?』
英美子は、ふと窓の外を見てから返信する。
『うん、見えた。オレンジが濃くて、なんか風景を見て久々に感動した。自然て凄いね』
数分後、また通知が鳴る。
『たしかに(笑)自然て凄い。俺も感動した』
そんなやり取りが、日々の中に静かに溶け込んでいく。
英美子は、サクラが膝の上で丸くなるのを撫でながら、画面に向かって微笑む。
ある日は、千切から写真が送られてきた。
海外の街角に咲く、名も知らぬ花。
『英美子が好きそうだったから、撮った。』
英美子は驚きながらも、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
いつの間にか千切は彼女のことを『英美子』と呼び捨てにするようになり、英美子も彼のことを『豹馬』と呼ぶようになっていた。
『ありがとう。ほんとに、好きな色。』
『今日、シュートミスってコーチにめっちゃ怒られた。最悪。』