第5章 試合の後で
マスコミの騒動もようやく落ち着き、英美子は最後の日、黒澤に付き添われて空港へ向かった。
潔、蜂楽、千切、玲王、凪——それぞれに別れを告げるたび、胸の奥に静かな痛みが広がった。
荷物をまとめ、御影グループのホテルを後にして、送ってくれた黒澤に、今までのこと全て含め、丁寧にお礼を告げると自宅へと戻る。
誰もいない部屋は、少し広く感じられた。
掃除を済ませ、荷解きをしていると、突然チャイムが鳴った。
一瞬、あの日の恐怖が蘇り、体が反射的に縮こまる。
息を殺してインターフォンの画面を覗くと、そこに映っていたのは親友の恵美だった。
ショートカットがよく似合う、メンズライクな女性。
その姿にほっとしてドアを開けると、彼女は大荷物とともに雪崩れ込むように入ってきた。
「え!? 何事!?」
英美子が驚いて声を上げると、疲れ果てて座り込んだ恵美の荷物の中から、かすかな鳴き声が聞こえた。
「ニャー」
「おお! すまんすまん、潰すところだった」
そう言って恵美は荷物の山からキャリーバッグを持ち上げ、英美子の前にずいっと差し出した。
「これ! 約束の猫!」
キャリーバッグの中では、まだ子猫の面影を残した若猫が身を震わせて縮こまっていた。
そういえば以前、恵美の親戚の家で野良猫が子猫を産み、面倒を見ていると聞いたことがあった。
引き取り手を探していると聞いて、一人暮らしの寂しさを紛らわせたくて、名乗りを上げたのだった。