第1章 出会いは病院で
食堂の片隅で、千切はスマホを握りしめたまま、じっと画面を見つめていた。
英美子からメッセージが届いてからというもの、彼の指は止まらない。返信文を打っては消し、打っては直し、何度も文面を見返しては、唇の端に微かな笑みを浮かべていた。
「……千切、顔に出てるぞ」
そわそわしながら潔が声をかける。
「桜沢さん、どんな感じだった?」
「うわー、千切ん、いいなー!俺にも連絡来ないかな?」
蜂楽は椅子の背もたれに逆向きに座り、千切のスマホを覗き込もうと身を乗り出す。自分のスマホを取り出しては、何も変化のない画面と見比べて、残念そうに眉を下げた。
千切は蜂楽の動きを軽く手で遮りながら、ようやく文面を確定させた。
『ご連絡ありがとうございます。
タクシー代の件、気にしないでください。
僕らが勝手に動いたことですし、桜沢さんが無事ならそれで十分です。
でも、どうしても気になるなら、今度お茶でも奢ってください。
それでチャラってことで』
送信ボタンを押した瞬間、千切はスマホを胸元に当てて、ふっと息を吐いた。
「……送った」
その声には、どこか興奮と安堵が混ざっていた。