第10章 家族になる
そして千切は、英美子の手を握り直した。
その手は、過去も未来も、すべてを繋いでいた。
そして、家族はひとつに
英美子の体調はようやく落ち着き、医師からも「もう大丈夫」と太鼓判をもらった。
蓮と翠はすくすくと育ち、琳はすっかりお姉ちゃんらしくなっていた。
サクラは子どもたちの騒がしさにも慣れ、日向でのんびりと昼寝を楽しむ日々。
そしてその日——
黒澤が去る日がやってきた。
「…では、お嬢様。蓮様、翠様、琳様、そしてサクラ嬢。
私はこれにて、任務を終えさせていただきます。」
玄関でスーツケースを転がしながら、黒澤は一礼した。
その目には、明らかに名残惜しさが滲んでいた。
「くろしゃわ、いっちゃうの?」
琳がぽつりと呟くと、黒澤は振り返って、涙をこらえながら叫んだ。
「琳様!蓮様!翠様!私はいつでも戻ってきます!
呼ばれれば、風より早く!影より静かに!ミルクよりぬるく!」
「ぬるくていいのかよ…」と千切が小声で突っ込む。
黒澤はサクラにまで深々と頭を下げると、最後に千切の前に立った。
「千切さん。…お嬢様を、どうか、どうか、幸せに。」
「もちろん。俺の妻だからな。」
(…くっ。言ってみたいそのセリフ!)