第10章 家族になる
黒澤は悔しそうに唇を噛み、スーツケースを引きずりながら去っていった。
その背中は、どこか芝居がかっていて、最後まで彼らしかった。
玄関が静かになると、千切は深く息を吐いた。
「…やっと帰った。」
英美子は笑いながら、蓮を抱き、翠をあやし、琳の髪を撫でた。
「でも、助かったよね。黒澤君、ほんとに頑張ってくれた。」
「うん。…でも、やっぱり俺がやりたいんだよ。
英美子のことも、子どもたちのことも。俺が守りたい。」
千切は、英美子の肩をそっと抱き寄せた。
その腕の中には、三人の子どもたちと、愛する妻。
そして、サクラが足元で丸くなっていた。
「琳、蓮、翠。…俺は、君たちのパパだ。
英美子、君は俺の人生そのものだ。」
英美子は微笑みながら、千切の胸に顔を預けた。
「私も、あなたとなら、どこまでも歩いていける。」
窓の外では、風が優しく庭の木々を揺らしていた。
その音は、家族の鼓動のように、静かに響いていた。
家族の顔を見ながら英美子は満ち足りた微笑みを浮かべた。