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足元に吹き抜けてく花びら

第10章 家族になる


「お嬢様…!」

病室に入るなり、黒澤は目を潤ませて彼女の手を取った。
英美子は驚きながらも、懐かしさに微笑んだ。

「来てくれたんだ…ありがとう。」

黒澤はその日から、家事と子守りに精を出した。
琳にはすぐに懐かれ、蓮と翠には目を細めて「天使だ…」と呟いた。

「ミルクの温度は37℃~40℃完璧です。
あ、蓮蓮様は抱っこをするとすぐ眠ってしまうので、少し抱っこの角度を変えて…
翠様は、お嬢様そっくりでいらっしゃる…」

千切はその様子を見ながら、複雑な気持ちを抱えていた。
頼らざるを得ない現実と、黒澤の英美子への眼差し。
そして、琳が「くろしゃわー!」と笑顔で駆け寄るたび、胸がざわついた。

黒澤は千切にも気さくに接するが、どこか火花を散らすような視線を向ける。

「千切さん、さすがですね。…でも、お嬢様のことは昔から知ってますから。」

千切は笑って受け流しながらも、英美子の手を握るたび、心の奥で誓っていた。

「俺が守る。英美子も、琳も、蓮も、翠も。」


名前に込めた願い

退院の日、英美子は蓮と翠を抱きながら、千切にそっと語った。

「蓮は、泥の中でも美しく咲く花。
翠は、澄んだ緑の宝石。
ふたりとも、困難の中でも輝けるようにって願いを込めたの。」

千切は頷きながら、彼女の肩を抱いた。

「きっと、強くて優しい子になる。俺たちの宝物だ。」

サクラが足元で鳴き、琳が「れん!すい!」と呼びながら笑った。
その声は、家族の音だった。
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