第10章 家族になる
成長とは本当に早いもので、赤ちゃんだった琳はもう三歳になっていた。
ふわふわの髪を揺らしながら、家中を元気に歩き回る。
話し方はまだ舌っ足らずで、
『ぱぱ』
『まま』
『さくらたん』
と呼ぶ声が、家の中を明るく照らしていた。
千切がトレーニングから帰ってくると、琳は玄関まで走っていって、両手を広げて飛びつく。
「ぱぱー!おかえりー!」
「ただいま、琳。今日も元気だな。」
サクラはその後ろでのんびりと尻尾を振り、英美子はキッチンから笑顔で顔を出す。
そんな何気ない日常が、千切にとっては何よりの癒しだった。
ある日の午後。
英美子は、千切がソファでくつろいでいるところにそっと近づいた。
手には、検査薬の袋と、少し緊張した笑み。
「豹馬、ちょっと話があるの。」
「ん?どうした?」
英美子は、言葉の代わりに指で「Vサイン」を作って見せた。
千切は一瞬「やったー!」の意味かと思って笑いかけたが、英美子の表情がどこか意味深で、首を傾げた。