第10章 家族になる
「英美子、頑張れ…」
恵美の声が、誰よりも深く響いていた。
陣痛の波が何度も押し寄せ、英美子はそのたびに千切の手を強く握った。
汗と涙が混じる中、彼女は声を振り絞る。
「豹馬…!」
「もうすぐだよ。英美子、あと少し…!」
そして——
小さな産声が、部屋の空気を震わせた。
女の子だった。
小さな手、小さな足。
その命は、確かにこの世界に生まれた。
英美子は、涙で濡れた頬のまま、赤ちゃんを胸に抱いた。
「…こんにちは。琳。」
千切は、彼女の隣で赤ちゃんの顔を覗き込みながら、そっと名前を繰り返した。
「琳…宝石みたいな響きだね。海外でも通じるし、英美子らしい。」
「うん。…この子が、私たちの宝物。」
病室に戻ると、仲間たちが拍手で迎えてくれた。
恵美は涙を浮かべながら英美子を抱きしめ、潔は照れくさそうに
「よく頑張った」
と言った。
蜂楽は
「俺、琳ちゃんのゴッドファーザーになってもいい?」
とふざけながらも、目は真剣だった。
玲王は
「この子の未来、俺たちで守ろう」
と言い、凪は
「泣き声、元気だったね」
と微笑んだ。
千切は、英美子の肩を抱きながら、仲間たちに頭を下げた。
「ありがとう。みんながいてくれて、本当に心強かった。」
英美子は、琳を抱きながら、窓の外の曇り空を見上げた。
その空は、どこまでも広く、どこまでも優しかった。