第1章 裏柱
「嘴平伊之助とは?」
御館様の話を聞いて、上弦と戦って生き残ったメンバーの1人の名前を出した。 御館様は彼にも期待をかけている様子だった。
「彼もまた、哀れな青年です。猪頭を着け、聞けば、山に捨てられていたところを猪に助けられ育てられたとか…天涯孤独の身の青年です。痛わしい…」
と言って涙を流し、また手を合わせた。 恵は彼の話を聞いて、面白そうだと言わんばかりに濃い黒い瞳を輝かせた。 そこへ豹馬が、お茶と、お茶請けのかき餅が入った皿を持って入ってきた。
何となく3人の会話が障子越しに聞こえてきて部屋に入りづらくて、部屋に入る機会を伺っていたが、会話が途切れた今だというタイミングで、部屋に入り、お茶を配り、お茶請けを置いて、部屋から下がった。
「多分4人は明日から裏柱のところに来ると思うが、裏柱たちの準備はいかがか?」
悲鳴嶼の質問に2人は頷いた。 恵は
「あたしのところは、特別な場所はいらないし、なんかあれば隠しと同じ訓練所をつかうから、問題ありませんよ。」
といい、璃玖も
「剣の鍛錬の場なら昔の場所が残っておるし、隠しの鍛錬場もある。柱たちの鍛錬方法も聞いてきた。無一郎殿が体の使い方を指導しているようじゃから、我は剣術においての足運びと再度太刀筋の使い方を教えるとしよう。天元殿と少し被るが、戦いながら使う体力の分配方法と体の使い方を教えることにしよう」
と言った。
「玄弥の例もあるし、素地のある子らには白兵戦の戦い方を教えてあげよう。」
と、恵は付け加えた。 悲鳴嶼は頼もしく二人を見て、手を合わせ頭を下げると
「では、明日から隊士たちを送るので、裏柱稽古、よろしく頼む。」
と言って、璃玖の屋敷を去っていった。
その頃には日が落ちていて、空には星が瞬き始めていた。 星の瞬きを見上げながら恵は頭の後ろに両腕を組んで
「明日から賑やかになりそうだね。ちょっと面倒くさいけど。」
と、冗談めかしていいながら璃玖を横目で見た。
「ああ。」
璃玖は静かに賛同するとぽつりとある名前を口にした。
「鬼舞辻無惨…黒死牟…奴らに借りを返す時がきそうだな。」
憎悪を孕んでその名を呼び、新たな戦いへの幕開けを睨みつけるように、星の瞬きに目を細めた。