第1章 裏柱
客間の座敷に入ると座卓の下手に大きな数珠を提げた背中が座っているのが目に入った。璃玖、恵が中に入り、屋敷の主人である璃玖が1番上手に座り、その少し下手に恵が座った。
足の悪い璃玖は片膝を座卓の下でのばし、右足を立てるように座って一言
「失礼」と、悲鳴嶼に目で断りを入れる。
「お久しぶりでございますな。裏柱のお2人共。」
と、悲鳴嶼が祈るように数珠を手に掛け掌をあわせながら、挨拶をした。 璃玖と恵は目を伏せ無言で挨拶を返した。
「隠しの育成に併せ、今回の柱稽古参加感謝申し上げる。」
目には涙を浮かべ数珠をジャラジャラと鳴らしながら悲鳴嶼は感謝の意を表した。
「御館様からお話を伺っていると思うが、太陽を克服した鬼が現れ、鬼舞辻無惨が彼女を奪いに来るであろう事を予測して、また、隊士たちの力の底上げを目的として、我々『表の柱』達は柱稽古を開始致した。屈強な隊士育成のの為忙しいことは承知で『裏柱』の2人である、お2人に協力を頼みたい。」
涙を流しながら、悲鳴嶼行冥は2人に頭を下げた。
「上弦3人を相手にした隊士がいるそうですね。」
恵が悲鳴嶼に尋ねた。 悲鳴嶼は静かに頷いたあと、合掌した手を擦るように回しながら
「不憫な少年です。妹が鬼になり、彼は守りながら戦ってきました。吾妻善逸も聞くところによると、師をなくしたと聞き申した。不憫であり、優しくて力強い少年たちです。」
「妹が鬼に…」
そのことを改めて聞いてどこか他人事ではない璃玖の鬼のような赤みを帯びた瞳の鬼のような細い瞳孔が大きく拡がった。
「我も1年前の戦いで、鬼になりかけた身。他人事ではござらんな。こうして胡蝶殿の薬のおかげで助かったが、一歩間違えたら、鬼と化していただろう」
ぽつりと言葉を発した。
「上弦壱との戦いのおりでしたな。あなたも気の毒な方だ。」
そう言ってまた、悲鳴嶼は数珠を鳴らした。
「玄弥は柱稽古に参加を?」
横から恵が問いかけた。 玄弥とは不死川実弥の弟で呼吸が使えない隊士だ。
悲鳴嶼の元に身を寄せているが、呼吸の使えない彼に短筒
――つまり銃の扱いを教えたのは彼女だった。 彼女の問いかけに悲鳴嶼は頷き
「彼もこちらにやって来るでしょう」
と言った。