第3章 鬼もどき
「私も、戦った。体の中に流れ込んだ鬼の血と。あれは…静かな侵食だ。痛みもなく、ただ、心が少しずつ冷えていく。自分が自分でなくなるような感覚。」
炭治郎は息を呑んだ。
「それでも、あなたは人でいられた」
「胡蝶の薬がなければ、私はもう人ではなかった。だが、薬だけでは足りぬ。人であることを選び続ける覚悟がいる。禰豆子も、きっとそうだったのだろう。」
璃玖の声は静かだったが、炭治郎の胸に深く響いた。
「…禰豆子は、強いです。俺より、ずっと。」
「ならば、お主も強くなれ。彼女を守るために。鬼舞辻を倒すために。」
璃玖は立ち上がり、炭治郎の肩にそっと手を置いた。
「明日からの稽古、覚悟しておけ。私は容赦しない。」
炭治郎はその言葉に、微笑みながら頷いた。
「はい。お願いします。」
璃玖は背を向け、夜の闇に溶けるように歩き去っていった。炭治郎は再び星空を見上げた。
禰豆子の瞳。璃玖の瞳。人と鬼の狭間で、それでも人であろうとする強さ。
その星のような光を胸に、炭治郎は静かに目を閉じた。