第1章 熱に浮かされて
しかししばらくすると斬っていた隊士もまた自由に動けなくなってしまう。糸がどこから出ているか探らなければならなかった。
さやかは勢いよく地面を蹴り、風にふわりと乗った。
感覚を研ぎ澄まし、目を閉じる。奇妙で邪悪な空気がまぶたの裏にしっかり見えた。
────次の瞬間、目を見開き、身体が落ちる勢いで邪気を斬った。
(……蜘蛛!それも、とても小さな…!)
(?!!?!!)
意識して見るとそこら中に不気味な蜘蛛が這っている。そして、それは自分の腕にもくるくると巻きついて来ていた。
さやかは身震いした。なぜ気が付かなかったのだろう、それを疑いたくなる邪気の数だった。そしてそれは大きな塊のようにうずまき、もはやどれくらいの数がどこに潜んでいるか分からないのだ。
(この夥しい数の蜘蛛は血鬼術のようなもの。いくら切ろうが焼こうが意味が無さそう……。)
(それよりも元凶の鬼を倒すことを優先した方が良さそうだわ。)