第1章 熱に浮かされて
そう判断した時にはもう身体を動かしていた。
とにかく自分がクモの巣にかからないように間合いを何度も斬りながら風の如く走った。目を閉じると見える、邪気の塊に一人突き進んだ。
邪気が段々と濃くなるにつれ、周りにいた仲間の隊士はひとりもいなくなっていった。
(ここで、私は鬼の首を斬るんだ!そしてみんなを守らなきゃ!!)
「いた!!!!!うぉぉおお!!」
ザシュッッッ!!!!!!!
鮮血が飛び散った。
視界が赤に覆われる。
心臓が人生でいちばん大きく跳ねた。
さやかが斬ったのは、鬼の首ではなかった。
……自分だった。
ドサッ
さやかは膝をその場に崩れ落とした。