第1章 熱に浮かされて
気を持ち直して木の影から刀を構えた時、
「!」
さやかは自分の手が動かせなくなったことに気がついた。
────その瞬間、
青ざめた男隊士がぐちゃぐちゃに曲がった腕でさやかに斬りかかってきた。
「きゃっ!!」
間一髪、無意識に刀を持ち替え、刀を受けていた。
そして何故か囚われていた右手が解放されていることに気がついた。
(そっか。これは全部糸で操られているんだわ。)
「みんな!!糸を切って!!よく見たらあるわ!!!!身体に絡みついてるの!!!」
「くっ……!!!」
「ぅっ!!!」
「ほんとだ…!」
体力の残った隊士たちが巻きついている糸を斬り裂いていく。解放され、倒れるものがほとんどだったが、幸いまだ数人は動けるようだった。
(鬼はどこにいるの?!)
そう考えながらもさやかは隊士の周りをくるくると舞い、糸を切っていった。