第1章 熱に浮かされて
次々に迫り来る仲間の刃にはいつもの彼等からは考えられないほどの力が込められていた。
「もうやめてっ!!!来ないで!、!」
「もう!!殺したくないんだ!!やめてくれ!!!!」
隊士たちの叫びが悲痛極まりなかった。
さやかも必死だった。だが、ひとりで戦うにしては戦況が悪すぎる。一対一だったのが、周りは段々と倒され、そして寝返った仲間たちが敵に加わっていく。
金属の擦れる音が自分の命の危機を知らせている。
「うっ…!、負けちゃう…どうしよう…!!」
汗や不安で手に力が入りにくい。受け切れていた刃もだんだんと避けるのみになってきてしまう。
木の影に息を潜め、隊士たちの動きに目を凝らした。しかしそんな間にも仲間が仲間を斬り、バサバサと人が倒れていった。
誰も助けが来ないかもしれない現実に、手足が小刻みに震えていた。
「師範……っ、誰か……っ!!」
(でも、私しかいないなら何を言っても無駄…殺される前に、殺せ……!!!!)