第5章 籠
「はぁ…かわいそうに。そんなにこわがらなくていいよ?俺、君の体を傷つけようと思ったんじゃないから。ほら」
男が手を差し伸べてくる。
全身からぬるぬると水分が抜けていき、顔がぐしゃぐしゃになる。
「いっ…いや!」
さやかは必死に手足をばたばたと動かしどうにかその場を逃れようと試みる。
しかし体がどこに向かおうとしているのかもわからない。恐怖で感覚が掴めず、先ほどの位置から1メートル動けたのかすらわからなかった。
「おやおや…そんなに慌てなくても」
気がつくと男はさやかの体の横にぴったりと寄り添って──────────
「ここからは逃げられない。」
絶望の言葉をさやかに浴びせた。
男の指がさやかの顎先を持ち上げる。
反抗することが命に直結しかねないさやかは怯えた目をきつく閉じることしかできなかった。