第5章 籠
そんなある日、お母さんが嬉しそうな顔で朝方帰ってきた。
訳を尋ねると悩みを聞いてくれて、地獄のような現実から救ってくれるところに出会ったのだというのだ。
さやかたちが連れてこられたのは広い広い寺院の一室だった。
「お母さんがね、この前言ってた教祖様ね。ここにいらっしゃって、さやかたちのお話もきっと聞いてくれるわ。」
お母さんはクマのある顔で垂れ目を眉毛と共にさらに下げさせた。
先日話を聞いた時はいよいよ母も頭をやられてしまったのかと心配になったが、どうやら実在する宗教施設のようで、ひとまず今のところは精神科に行かずに済んだ。
母が言うには、そこにいる教祖様は神のような御姿で人々の話をひたすらに慈悲深く聞いてくれるようだ。
「ごめんね、苦労ばかりかけて。でもお母さんがいない時、あなたたちここに来たらいいからね。お父さんがあなたたちを守ってくれるとは限らないから…。」
言いながら薄く涙を浮かべ、膝に乗せた拳を天井に向けて開いた。
「お母さん、大丈夫よ。私たちは家族さえいれば!お父さんも、きっとわかってくれると思うの。私いい子にしてるから。」
「うんうん!だからお母さん泣かないで?」
お姉ちゃんとさやかがそう言い、妹がお母さんの膝に頭を乗せた。