第4章 近づいて
「うーん…その…立場??とか恋愛にはなかなかスパイスになりますよね!学校とか職場でも友だちにバレちゃわないように、とか見ててドキドキしちゃいます!……わ、私はその、経験はないんですけど。」
義勇はまたそろりと手を進める。
「でも、立場を越えてまでも付き合ってるって本当の恋な気がします。ロミオとジュリエットみたいな……?」
もう一度手を進めると、義勇の指先がさやかの華奢な指先に触れた。
義勇はどきりと心臓を鳴らしたが、仏頂面で前を向いたままで耐えた。
「あぁ、そんな素敵な人と恋に落ちちゃうなんて私には…関係な…って先生!聞いてますか?」
「あぁ……。」
義勇はどさくさに紛れてさやかの爪をするりと撫でた。
「っ…?!」
さやかはそれでようやく触れていたことに気がついたようで、手をぱっと跳ね除けた。
が、義勇はその手を今度はしっかりと強く掴む。