第4章 近づいて
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義勇は内心焦っていた。
昨日の今日でさやかに接触する機会ができるとは思わなかったからだ。
義勇は今まで、前世を思い出したとしても特に変わることはなかった。
それはさやかと話す機会がほとんどないからだ。体育の授業で遠巻きに見ることはあるし、時たま会話することもあるが、ほんの一瞬であり、特に支障はなかった。
だが、今日は違う。
ふたりきりで話すのはまず初めてである上、このような密室の緊急事態である。
己の判断の早さには自信があったが、それは瞬間的な行動のみである。
こういう時にうまく安心させる方法は全く思い浮かばなかった。