第4章 近づいて
足音と共に、座っていた冨岡先生が現れた。
体育倉庫の薄暗い電灯が逆光になって表情がよく見えない。
(怒られる……!)
さやかは冷や汗が出る感覚がした。
「窓が開かないかなと思って、試してたんです!はは…無理だったんですけどねっ!今下りるところです、大丈…きゃっっ」
汗で手を滑らせたさやかの体は一瞬で棚から放り出される。
さやかは衝撃に備え、きゅっと目をつぶった。
(……あれ??)
待っていた衝撃はいつまでも訪れなかった。
さやかはそっと目を開ける。
目の前には冨岡先生の顔があって……
長いまつ毛に切れ長の目、薄いくちびる、造形の美しい顔が無表情でこちらを見る。
吸い込まれるような青い凪いだ瞳にさやかの顔が見えた。
「っっっっっっ!?」
(先生に抱きとめれてる!?)
状況を理解できたさやかは茹で上がるように顔を赤くして手足をばたつかせた。