第4章 近づいて
「えぇっ?先生、諦めるの早すぎですよっ!」
「……。」
「なんとか言ってくださいよ!私今日家でやりたいことあったんですよ…!?お母さんも心配するし…。」
冨岡先生は相変わらずよく分からない表情をしている。
「……この扉は今日はもう開かない。落ち着くんだ。」
そう、この扉はこの日はもう開かない。金属製の扉は電子錠で管理されており、中学と高校共通の管理室で開閉されている。
つまり、先生自身は鍵を持っていなかった。
だがそこまでの説明がなされることはなかった。
この男の口下手は時に相手を不安にさせる。
「えぇ…そう言われましても…。」
仕方がないとおもったさやかは自分で方法を探し始めた。