第4章 近づいて
やっと何をすればいいかわかったさやかは冨岡先生の言う通りにボールの硬さを確かめていく。
ボールを手のひらで挟んでもち、両脇を開いてぐっと力を込めてみる。
万年運動不足のさやかにすればそれだけでかなり重労働な気もした。
柔らかいボールは先生が確認してあとで空気を入れやすいように固めて他のカゴに入れていく。
ふたりで黙々と作業をする時間がしばらく続いた。
ふと気がつくと外は薄暗くなり始めていた。窓から差し込んでいた西日も深く濃い紫がかって急に夜の近さを感じた。
ボールはもう空気が入ってふくふくとしており、さやかはボールを磨きにかかった。
冨岡先生は体育倉庫のさやかがいるところのさらに奥の方でマットの枚数を数えているようだ。
冨岡先生は怒鳴っているところがよく目立つ。故に勝手に怖がっていたところがあったが、先生とふたりで黙々と作業をしているのは何故か心地が良かった。
その時─────
ギギッガラガラ、バァン
…ガチャッ