第1章 熱に浮かされて
程なくして目的の場所に着いた。
山は禍々しい空気に覆われ、木々が敵になったような緊張感を漂わせていた。
胡蝶の指示で、二手に分かれて鬼を探すことになった。
義勇自身は共同任務について特に嫌なことはなかったが、ペアの隊士は何故か怒っていることが多い。特に不死川や伊黒はいつも怒っている。
よってひとりで捜索する方が楽ではあるのだった。
少し行って義勇は立ち止まった。
────人の気配がする。隊士がいるに違いない。
自分が柱の席を埋めている以上、誰かの役に立たなければ。
「誰かいるか!」
返ってきたら幸運だったが、そうもいかないようだ。酷い臭いがそこら中からしているのだから。
「!」
そこには気味の悪い光景が広がっていた。関節が有り得ない方向に曲がっている隊士の死体。中には変な角度で宙に止まっているものもいて、まるでクモの巣にかかってしまったかのようだった。
だがそれどころではない。戦いは始まってもいないのだ。近くに鬼の気配はなかった。情報を集めねばならない。