第1章 熱に浮かされて
**************************
その日は久しぶりに直々の命令を受け、現地に急いでいた。
今回の任務は那田蜘蛛山にある。隊士が大勢送り込まれ、そのまま帰ってこないのだ。
御館様の言うには、”十二鬼月”のいる可能性があるらしい。
どちらにせよ倒すまでだった。
鬼殺隊の柱である冨岡義勇にとって、死にそうな場面こそ山ほどあるが、いつだって同じように首を斬る以外方法がなかった。
「あら。考え事ですか?冨岡さん。」
隣から高めの声が聞こえる。
虫柱──胡蝶しのぶ。
何を考えているかよく分からないが、よく話しかけてくれるので柱の中では仲がいい方だ。
「聞いてますか??人から話しかけられた時は返事をするのが普通なんですよ?あ、冨岡さんは普通なんて分からないかもしれませんね、失礼しました。」
「……俺は普通くらいわかる。」
「あ〜、そう思っていらっしゃるんですね。そう思っていらっしゃるならそれでいいと思いますが…。」
産屋敷邸からは少し距離があった。
それでも柱のふたりには特に問題はなかった。