第3章 予感
一人ずつ名前を呼んでいく時間。天元はこの時間がなんだかんだ好きだった。
安心して子どもたちが生活できる現代。
名前を呼んだものが明日も明後日もほぼ確実に生きている世界。
(あの頃とは比べ物にならねぇな……。)
実際、この生徒たちはもちろん、大人も知らない。大正以前には、鬼という生き物が実在した。
天元は仲間と共にその時代を生き抜き、そして多くの命が消える瞬間を目の当たりにした。
(俺らの時代は誰も知らねぇし、そのままなかったことにしてくれりゃあ、それがいちばん平和なのよね。)
生徒たちが名前を呼ばれてだるそうに返事をしていく。天元はふと、ひとりの生徒が居ないことに気がついた。
「お?花凪野どこ行った?休みか??」
─────がらがらがら!!!