第3章 予感
「ほら、もう傷も大したことないんだし、迷惑をかけないうちに教室へ戻ろう。」
善逸くんの方を向いて竈門くんはそう言った。
そして自分の手元に目線をやった。
「わっ!」
「すすす!すみません!俺、ずっと掴んでいて!」
わたわたと竈門くんが手を離し、左腕が軽くなる。
「大丈夫だよ、それよりも善逸くん、ちゅってするのは無理だけど、軽く消毒していく?」
「さやかちゃんっ!」
きらきらと目を輝かせて善逸くんは椅子にかけた。
さやかは救護セットから絆創膏と消毒を取り出す。白い箱を開けると、消毒の匂いが辺りに広がった。
さやかは善逸くんの手をとり、怪我している部分を探す。
「どこを切ったの?」
善逸くんに尋ねるが、目を細めて幸せそうな顔をしており、全然聞いていないようだった。
仕方がないので、両手で善逸くんの手を包むと、くるくると手を見始めた。