第3章 予感
ダダダダダダダダ
────言ってるそばから来た。
バンッッ
保健室の古いドアが勢いよく開いた。
「さやかちゅわぁぁあん!!!!」
半べそをかいた男子生徒が、私の名前を呼んでくる。
「俺、怪我しちゃったよぉおおん!!痛いよぉお!!!!ちゅってして?!?!?!ね?!!ちゅってしたら俺またがんばれるからぁあ!!!!!!」
我妻善逸───彼は1年生。黄色い髪をしているのは全校で彼だけだから、認識するのは割と早かったと思う。
特に接点がなかったのだが、以前保健室に来た時、突然私の手を取り、「さやかちゃんっ?!!会いたかったよぉぉおおお!!!俺、我妻善逸だよぉお!!俺と付き合って!!!お願いだよぉおおお!!!!」なんて叫び出したのだ。
それ以来、会うたびに同じテンションで話しかけられてさやかは辟易していた。
「善逸っ!やめないか、みっともないだろう?ほら、他の皆さんもびっくりしてるし。」
騒ぎ立てていたので気が付かなかったが、善逸くんの手はひとりの男子生徒の襟元を掴んでいた。
どうやら引きずってきたらしい。