第2章 夢うつつのあの人
そういえば────
「テメェ、さっき寝言言ってやがったぞ。」
「鬼が……どう…とか……。」
「……(モグモグモグモグモグモグ)」
「……モグッ?!」
冨岡は目を見開いてゴホゴホと咳をした。あせあせと水を注ぎ、一気に飲み干す。
一息ついてから言った。
「気にするな。」
何も無いなら、なんのことだと言うだろう。だがそうではなかった。言いたくないような、なにか理由があるか、心当たりがあるんだろう。
「テメェが言わなくても気にしちゃいねェがよ。」
実弥は最後の大根をひと口で食べるととんすいに残った出汁を飲み干した。
空になった器を少し見つめたが、おかわりなどして一緒にこれ以上過ごすほど気の置けない仲ではないのだ。
「……世話しに来たが世話になってしまったなァ。俺もそろそろ帰るぞォ。」
「今日は助かった。帰るといい。」
(こいつ…本当に合わないやつだ。)
「おォ、もう倒れんじゃねェぞ。また明日な。」