第1章 熱に浮かされて
鬼も驚きと恐怖で引きつった顔をしているようだった。
強く地面を踏み、風に乗った。先程と同じように目を閉じ、邪気を探る。
「!!!あっちもこっちも……あの人形を出すしかないわね……!」
鬼はどこか俯いて焦っているような声を出した。
(よし……!!斬れる!!!!)
最高到達点から身体を翻し、鬼の間合いへ向けて加速する。
その瞬間、
────クラりと世界が周り、目の前が見えなくなった。
ドサッ
「っは!!血が足りなくなったのね!?人間って本当に情けない!さっさと殺してこの場を離れることにしよう。」
何も言えないさやかを見て鬼がどこか安心したように言った。しかし、それもその一瞬だけだった。
どこからか遠くからちかづいてくる音が聞こえる。
「…ぐっ!!私だっていつ殺られるか分からない!!時間がかかりすぎてる!もう必要ないわ、脆い人間の人形は!!役立たず!!!役立たず!!!!」