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黒子のバスケ*短編集*

第2章 君だけに(黄瀬涼太)



___

私と涼太くんが初めて出会ったのは、海常高校受験の日。
学校へ向かう電車内は通勤通学の人で溢れかえっていた。
しばらくすると、後ろから誰かの手が近づいてくるのに気がついた。

(…え…これって…痴漢…?)
(やだ…怖い…どうしよ…)
(誰か…助けて…!!)



___グイッ…


「何してるんスか…?」


恐怖で目をつぶっていた私が、声のする方へ恐る恐る目を開けて見ると、そこにはスラッと背の高い黄色い髪の男の人が痴漢と思われる男の腕を掴み、捻り上げていた。

周りの乗客もザワザワと騒ぎ始め、ちょうど駅に着いたタイミングで黄色い髪の男の人がホームにいた駅員さんに声を掛けた。

「すいませーん!この人痴漢ッス。」

男は駅員さんに連れられて行った。
私と黄色い髪の男の人も事情を詳しく聞きたいと駅員さんに言われたが、恐怖でパニックになっていた私を見て、彼が事の一部始終を代わりに説明してくれた。



「___…終わったッスよ…?大丈夫ッスか?」

ボーっとしていた私に話しかけてくれた彼。

「てかその制服…もしかして、今日受験ッスか?」

『…あっ!!いけない!!今何時…!?』

「もうすぐ8時ッス。受験校どこッスか?」
『海常高校です!』
「…!…じゃ学校まで一緒に行くッス。」
『え!?そんな!私大丈夫ですからっ!』
「いーから。また何かあったら大変ッスからね。ほら、行くッスよ!」




___





『はぁはぁ…間に合ったぁ…!』
「もう大丈夫ッスね?じゃ、受験頑張ってー!」

そう言って歩き出した彼の後ろ姿を見て、

『あ…あのっ!…ありがとうございました!!』

大きな声で伝えると、彼は振り返ることなくヒラヒラと手を振って応えてくれた。


『…助けてもらったんだから、せめて名前ぐらい聞けば良かったかな…。でも、どこかで見たことあるような…。…とりあえず受験!頑張らなきゃ!』





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