第2章 君だけに(黄瀬涼太)
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(私のクラスはここかな…?はぁ…緊張する…よし!!)
ガラガラッ…
扉を開けると、賑やかな声とともに一際人が集まっている場所があった。
(何だろう…?)
そう思いながら黒板に貼られた座席表で自分の席を確認し、席へと向かう。
「ねぇねぇ!モデルの黄瀬くんだよね?同じクラスなんて信じられなーい♡」
「黄瀬くん連絡先交換しよー?」
人だかりのすぐ隣りの席だった私は、荷物を机に置き人だかりの中心にいる隣りの席に目線を送った。
『…あ…!』
私の目線に気付き、こちらを見てにこやかに笑いかけてくれたその人は…
「無事合格できたんスね!今日からよろしくッス♪」
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その日の放課後。
『あのっ…!受験の日、助けてくれて本当にどうもありがとう!まさか同じ高校だったなんて…』
「なんもッス!俺、あの時もう推薦で入学決まってたんスけど、たまたまモデルの仕事であの電車乗ってたッス。」
『モデル…黄瀬…え!?黄瀬涼太くん!?今まで全然気付かなかった…』
「あの日相当パニックになってたッスからね…まぁ、あんなことあったら誰でもそうなるッスけど…。それより今日とか電車大丈夫だったッスか?」
『あ、うん。あれから乗る場所とか気をつけるようにしたの。またあったら…とも思うけど、乗らないわけにもいかないからね。』
「…じゃあ、俺と一緒はどうッスか?」
『…え…?』
「まぁ、俺部活あるし、モデルの仕事も時々あるから帰りは難しいかもッスけど、朝の時間なら…ね?決まりッス♪」
『でも…』
「じゃ、明日の朝あの日と同じ時刻の電車で!またね!レイラっち♪」
そう言って黄瀬くんは帰って行った。
『名前…覚えてくれたんだ…。』