第4章 約束
『ハァ…ハァ…』
呼吸の回数を減らしていたものの、そろそろ限界が近づいてきている。
意識が薄れつつあるのだ。
今の私に出来ることは自我を保つこと…
自我を失えば、異能力が暴走してしまうのだ。
太宰さんのいないこの場所で、私の異能力が暴走すれば大勢が死ぬ…
フランシスが何処まで私の異能力を知っているのかは判らない。
でも少なくとも、全て知っている訳でもなさそうだ。
"ヒガンバナ"はほんの少しの隙間があれば外に猛毒を撒くことができる。
この部屋も密室ではあるものの、ダクトにほんの少しの隙間がある…つまり私の異能力が暴走すればこの船の中は猛毒が充満し、大勢が死ぬ…
彼の仲間を死なせたくないとの想いも全て水の泡となるのだ。
そしてついに目の前の景色が霞み、歪み始める…
薄れゆく意識の中、頭に浮かんだのは…
『ッ…ハァ…ハァ…中也…』
中也の笑った顔だった。
彼の太陽のような眩しい笑顔…
"次逢う時は手前の行きてぇとこに連れて行ってやる!"
『そうだ…ハァ…約束…』
中也との約束…
守らなくちゃ…
初めて生きたいと思えたのはこの時だった。
生きたい、中也と水族館に行きたい…
だけどそんな願いも虚しく…
ドサッ…
私は意識を失った…