第1章 再会
そんな私も元ポートマフィアの人間だ。
あの頃のように"人形"と呼ばれることは今はない…
それは"彼"が私を変えてくれたから。
"自分の感情を殺すんじゃねぇ"
"泣きてぇときは泣け!"
"手前の笑った顔…俺は好きだぜ"
今でも"彼"…中原中也のことを思い出せば胸が締め付けられる。
暗闇にいた私に手を差し伸べてくれた人…
外の世界を知らない私に沢山のことを教えてくれた…
私にとって中也は…"太陽"だった。
そして初恋の人でもあった…
でも私は自らの意思で彼の前から姿を消した。
その時決めたのだ。
二度と恋はしないと…
太宰さんとポートマフィアから抜け出して4年が経過した。
私たちは今は武装探偵社で働いている。
あの時とは違って、人を救う側の世界にいる。
それは"彼"…織田作之助の意思を引き継ぐ為に…
探偵社に来て2年、それなりに慣れてきた仕事。
大変ではあるけど充実はしている。
時折、街を歩いているとカップルが目に入り胸が苦しくなる。
でもそれは自分が選んだ道…って云い聞かせる。
二度と恋をしないと決めたのは中也への懺悔でもある。
黙って中也の前から姿を消したのだから…
中也がポートマフィアの幹部になったとは風の噂で聞いた。
中也も頑張ってるんだ。
私も頑張らなくちゃ…
そう自分に喝を入れて毎日を過ごしていた。
もう二度と逢うことはない…
そう思っていた。
まさか中也と再会するとはこの時は夢にも思わなかった。