第24章 明日美の後押し
「星歌、緒方先生のこと好きなんでしょ?」
明日美の静かな声に、星歌は顔を上げられず、そんなにはっきり言わないで…と、恥ずかしさで言葉が詰まる。
明日美は、白川先生は反対っぽかったけど…それは言えないな…と、談話室での「高校生はやめとけ」を思い出しつつ続ける。
「緒方先生、星歌のこと好きなんじゃないかな?」
「そんなわけないよ…。だって、緒方さんは大人だし、プロ棋士だし、私のことなんか何も思ってないよ…」
「好きじゃなかったら、美術館とか一緒に行かないでしょ? 」
明日美は星歌の目を覗き込むように言う。胸中では「そんなにあの子が好きなのか?」という問いに緒方が答えなかったことを思いだす。あれは、好きだから答えられなかったんでしょ?
「でも、そんな…」
緒方さん、本当に?でも、私なんか…と、今まで2人で出かけたことや車内での目が合った瞬間、「キミと出かけられて楽しかった」の言葉が蘇り、胸が熱くなる。
「ねえ、星歌はどうしたいの?」
明日美が優しく、でも真剣に聞く。…どうしたい…?私、どうしたいんだろう…と、星歌は自分の心を見つめる。やがて、意を決して小さな声で呟く。
「私が緒方さんのこと好きなの、変だと思わない?」
明日美はポテトを手に少し驚いた顔をするが、すぐに穏やかに笑う。
「びっくりしたけど、変とは思わないよ」
「年の差もあるし…緒方さん、囲碁棋士なのに?」
「年の差はあるけどさ、お互いがよければいいんじゃない? 囲碁棋士かどうかは、恋愛に関係ないよね?」
明日美は軽く肩をすくめて言う。
「でも、緒方さん、とっても強いんでしょ…?」
「確かに強いけど…。塔矢先生はもっと強いけど、奥様は棋士じゃないでしょ?」
明日美は笑顔で返して、星歌を励ます。塔矢先生の奥様…そうか、そういう人もいるんだ!と、ほのかな希望が星歌の胸に芽生える。でも、私、緒方さんとどうしたいの…? と、明日美の問いが響くが、答えはまだ見つからないでいた。