第23章 芦原の確信
「緒方さん、お疲れさまです。送ってくれてありがとうございます!」
駐車場で緒方の姿を見つけた芦原は明るく礼を言うが、星歌への片想いが胸をざわつかせている。
「帰るついでだからな」
「カフェ行ったら、星歌ちゃん、元気そうでした」
芦原はさりげなく探りを入れるように言う。
「そうか」
緒方はいつものようにクールに答えるが、ずいぶんと優しい目をしてる気がする…と芦原は思う。星歌ちゃんの話をしたからかな…。さっき星歌ちゃんも、緒方さんの話をしたら嬉しそうだったな…。先ほどのカフェでのことを思いだして切なくなる。
助手席に乗り込んだ芦原は、足元に落ちていたゴッホ展のリーフレットを見つける。星歌の言葉とリーフレットがつながり、目の前が暗くなるような感覚に陥った。
「…緒方さん、ゴッホ展行ったんですか?」
「ああ、年末にな」
星歌ちゃんも年末にと言ってた…。やっぱり2人で…?芦原の中の疑いの感情が大きくなる。一方で緒方は、あのときのか…と、車内で星歌が膝にリーフレットを広げていた姿を思いだしていた。
「もしかして、デートですか?」
芦原は半分茶化しつつも、真相を知りたくて聞く。
「ただの知り合いだ」
星歌ちゃんと同じこと言うんだな…。星歌ちゃんも緒方さんも、似てるところがあるよな…。芦原は緒方のことは見ず、正面を向いたままで言う。
「美術館とか、よく行くんですか?」
「割と行く」
緒方は短く答え、メガネを軽く直す。芦原はカフェでの白川の言葉を頭の中で反芻している。星歌ちゃんが「印象派展に一緒に行った人」って、緒方さんだ…と、疑念が確信に変わりつつある。芦原はリーフレットを手に持ったまま、複雑な気持ちで窓の外を見る。星歌ちゃんと緒方さん、そんな関係なのか…と、片想いの切なさが芦原の胸を締めつけていた。