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白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第21章 クリスマス、そして年末の誘い


 週末のカフェでは、カウンターに座る白川が星歌と話をしていた。
「お父さんとお母さん、今日来るのかな?」
「はい、もう着いた頃かと思います」
「会えるの楽しみだね」
「はい」
「会うのは夏以来なのかな?」
「そうですね、8月まであっちにいたので、4ヶ月ぶりです」
 にこやかに話す星歌を、緒方は微笑ましく思う。
 数分後、年配の棋士が帰り際「星歌ちゃん、悪いけど、これ、捨てておいて」と新聞を星歌に渡した。星歌がきれいにたたみ直そうと新聞を開くと、そこには大きなゴッホ展の広告がある。
「ゴッホだ!」
 星歌は、思わず小さな声で呟く。とっさに、緒方さんと一緒に行きたい…と、浮世絵展や印象派展を思いだして胸が高鳴る。だが、中学生でプロ棋士になった緒方さんと私、違いすぎるよね…。私なんかが誘ったら迷惑かな…と、心が暗くなる。緒方は星歌の呟きを聞き、ゴッホ展、志水くんと行ったら楽しそうだと、星歌と同じように展示へ行ったことを思いだすが、オレが誘うのは、正しいことなのか…?と自信が持てない。
 星歌は新聞を丁寧にたたみ、カウンター裏に置く。
「ゴッホ展、家族で行けばいいのに。お母さん、キュレーターなんでしょ?」
 白川が優しい声で促した。
「そうですね」
 星歌は穏やかに答えるが、緒方さんと行きたいのに…と、複雑な気持ちが胸を占める。
 緒方の心には、そうだな…家族と行くんだよな、オレは何を期待していたんだろうな、と寂しさが湧く。それと同時に、オレが志水くんを誘わないように、家族と行けばいいと白川は言ったのかもな…という疑念も芽生える。あの子は、両親が来るからと芦原の誘いは断ったが、オレなら断られないんじゃないか…?そんな自信のような気持ちもある。だが、彼女にとってはオレより家族と行くほうがいいかもしれない…とも思う。志水くんの笑顔を見たかったが、今回はやめておくか…。緒方はひっそりと、諦めの気持ちを抱いていた。
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