第21章 クリスマス、そして年末の誘い
クリスマスを間近に控えた夕方、窓の外には初冬の薄暗さが広がり、街並みは街灯にぼんやりと照らし出されている。カフェのガラス扉にはリースが掛けられ、レジ横にはツリーが置かれている。いつもはクラシックのBGMもクリスマスミュージックに変更されている。
緒方はカウンターの端でコーヒーを飲みながら、星歌がレジを打つ姿をチラリと見る。あの子の笑顔はいつも通りだなと、心があたたまる。だが、夢での星歌との口づけが罪悪感を呼び起こしている。
カウンターの真ん中に座る芦原が、星歌に声を掛けた。
「ねえ、星歌ちゃん、週末にでもクリスマスのイルミネーション見に行かない? めっちゃ綺麗だよ、どこか行きたいところあったら、案内するからさ」
「え、イルミネーション?」
「うん、よかったら、ついでに夕飯も一緒にどうかな?」
芦原は勢いづいたように続ける。緒方はコーヒーカップを握る手に力を入れ、芦原のヤツ、クリスマスだからか今日はずいぶん積極的だな…と、胸がチクリとする。
少し考えてから星歌は答える。
「来週、ニューヨークから両親が来るから、ちょっとバタバタしてて時間取れなそうです。ごめんなさい」
星歌は申し訳なそうに笑う。
「…そっか、じゃあ仕方ないな、また今度ね」
芦原は残念そうだが、軽く笑って引きさがる。
緒方は、両親が来日か…と星歌が家族と楽しく過ごす時間を微笑ましく思う。
やがて芦原がカフェを出ると、星歌が「ふぅ…」と小さく息をついた。その様子に緒方は、芦原の誘いは気乗りしなかったのか…?と、自分と星歌は2人で出かける関係であることに優越感を抱きつつも、彼女に対しての名前のつけられない感情を思いだす。オレは一体、どうしたいんだろう…?その疑問が再び緒方の心を乱していた。