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白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第21章 クリスマス、そして年末の誘い


 クリスマスを過ぎ、世の中は一気に年末モード。対局の予定もしばらくはなく、棋士たちは束の間の休息を味わう。緒方は自宅のパソコンで棋譜を整理している。碁よりオモシロイものなんてない、オレには碁が1番だ…と、自分に言い聞かせるように思う。
 作業が一段落し、コーヒーでも飲むかと席を立つが、キッチンでコーヒーを切らしていることに気づく。棚の奥に、以前に星歌からもらったインスタントコーヒーがある。これ、初めて一緒に出かけたときだな…と、2人で過ごすときの無邪気な笑顔を思いだす。なんとなくもったいなくて開けられなかったけど…いい機会だな…と、封を開ける。湯を注ぐと深い香りが立ち上り、星歌のエプロン姿が頭に浮かぶ。
 クッキーをつまみながらコーヒーを飲み、今頃、志水くんは両親と楽しく過ごしているのか…と、ニューヨークからの両親の来日を想像している。ゴッホ展も家族と行ったかもな…と考えると、少しの寂しさを覚える。だが、芸術に詳しくないオレよりも、キュレーターの母親と行く方が志水くんは楽しいだろう…とも思う。
 軽く振動したスマホに目をやると、星歌からのメッセージ。
「ゴッホ展のチケット2枚あるので、よかったら一緒に行きませんか?」
 緒方の心臓が跳ねる。家族と行くんじゃなかったのか? と、カフェでの白川との会話を思いだす。オレでいいのか…?と、年の差や立場への葛藤が一瞬よぎるが、星歌が自分を誘ったという事実が胸をあたためる。
 少し迷ってから…せっかく誘ってくれたんだからな…と自分に言い訳するように答えを出す。
「いいよ、いつにする?」
「やった! 明日の午後どうですか?」
 すぐに返信が来て、いつものように2人で出かけることが決まる。星歌の両親は来日した日にゴッホ展へ行ったこと、余っていた2枚のチケットを星歌がもらったということが、その後のやり取りで明かされた。
 10分ほど、そうしたやり取りを続けて、最後には星歌からの「おやすみなさい」の言葉とかわいらしいスタンプ。思わず微笑む緒方の胸の高鳴りは、いつまでも収まらずにいた。
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