第20章 雨の日の出来事
星歌を送り届けてすぐ、緒方も自宅に到着する。初冬の雨が窓を叩き、銀杏並木が街灯にぼんやりと照らされている。緒方はソファに横たわり、車内での星歌とのやり取りを思い返していた。
星歌のスクールコート姿と「中学生でプロ…すごいですね!」という言葉が頭を巡り、高校生の志水くんとプロ棋士のオレ…やっぱり合わないよな…と、年の差が重く響く。あの子に対する感情は恋愛なんかじゃないのに、どうしてこんなに苦しくなるんだ…と、胸を締めつけられる。やがて、疲れと雨音に誘われ、そのままソファで眠りに落ちた。
星歌が裸で微笑み、緒方にゆっくりと近づいてくる。
「どうしてそんな格好を…!」
緒方は慌てて言うが、星歌は無言で彼を抱きしめ、そっと口づける。その唇はしっとりとして柔らかい。志水くん…!と緒方の心臓は跳ねるが、ぬくもりと甘い香りに抗うことができない。次の瞬間、緒方はハッと目を覚ます。夢か…と、体中に汗が滲む。どうしてこんな夢を見るんだ…。妙にリアルな夢だった…と、罪悪感が胸を刺す。志水くんをこんな目で見るなんて…と、自己嫌悪に苛まれるが、体の昂りは収まらない。オレ、何考えてんだ… と、深呼吸して気持ちを落ち着かせようとする。
ふとスマホを見ると、通知が1件。
「全然連絡くれないじゃない? 久しぶりに会えない?」
10分ほど前に届いたメッセージ。送り主は恋人ではないが、定期的に会う女性だ。こんなタイミングで…と、緒方はためらうが、いつもの星歌のエプロン姿と先ほどの夢とが交錯して頭がおかしくなりそうだ…と、衝動的に「今から行ける」と手早く返信する。
緒方は車に飛び乗り、雨の中、女性の元へと急ぐ。
車窓には、雨に濡れた銀杏並木が車のライトに映え、初冬の夜が重く流れている。緒方の心の中では、誰にも言えぬ感情と欲望が渦巻いていた。