第17章 信じがたい噂と白川の忠告
「あの子に口止めしてるのか?」
白川の口調は穏やかだが、探るような目をしている。
「いや、そんなことはしてない」
緒方は即答し、あの子はオレとのことを誰にも話してないんだな…と、星歌の気遣いを思いだす。
「緒方の迷惑になるからって、気を遣ってるんだろうな。いじらしいよな」
白川は軽く笑うが、すぐに真顔になった。
「若い子を弄ぶなよ、まだ高校生だぞ?」
「別にオレは、弄んでなんかいない」
「じゃあ、どういうつもりだ? あの子、本気かもしれないぞ? まさかお前もか?年の差と立場を考えろよ。高校生はダメだろ」
本気って…?と、星歌の笑顔やカフェでのエプロン姿が浮かぶ。彼女と一緒にいる時間は楽しいが、この感情は何なのか自分でも分からない…と、緒方の心が揺れている。
「今ならまだ引き返せるだろ? 冷静になれよ」
白川の目は、緒方と星歌を憂慮する真剣さで満ちている。オレはずっと冷静だ…。そう思いながら緒方はウイスキーを一口飲むが、白川の言葉が胸に突き刺さる。年の差や立場の違いくらい分かっている。だからオレは芦原や真柴みたいに彼女を堂々と誘えないし、似合っている服だって気軽に褒められないんだ…と、心が引き裂かれるような感覚に襲われる。オレはただ、あの子が幸せそうに笑ってくれるのが嬉しくて…葛藤の中で星歌への想いが膨らみ、胸が熱くなる。白川の言うことは頭では理解できるが、感情が追いつかないでいる。
「オレ以外の誰かに見られたらどうするんだ?おもしろおかしく噂されたら、あの子だって傷つくぞ。一柳先生とあの子がどんなふうに言われてるか、お前聞いたか?」
白川が、静かだが鋭い口調で言う。緒方の胸に真柴の言葉が蘇るとともに、怒りが込み上げてくる。
「志水くんはそんな子じゃない!」
グラスを強く握りしめながら緒方は思わず声を荒げ、バーは一瞬の静寂に包まれた。