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白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第17章 信じがたい噂と白川の忠告


 何人かの客と店員がチラリと緒方と白川を見るが、酒を飲む客ばかりの店内ではそんな一幕も珍しくなく、すぐにざわめきが戻る。
 白川はグラスを手に、静かに続ける。
「オレだってあの噂、信じてなんかいないよ。でも、噂する奴らにとっては本当か嘘かなんてどうでもいいことで、話がおもしろけりゃそれでいいんだ。お前のせいで、あの子が傷つくようなこと言われたらどう思うんだよ?」
 緒方の胸に、星歌の笑顔が浮かぶ。志水くんが傷つく…?そんな噂は放っときゃいいんだと苛立ちが湧くが、あの子が変な目で見られるのは絶対に嫌だ…。そんな想いが胸を締めつける。そして再び、談話室での真柴の言葉が頭の中で繰り返され、汚い噂に彼女を触れさせたくないという気持ちが強まる。星歌のエプロン姿や、2人きりのときに「緒方さん」と呼ぶ声が頭を巡る。志水くんと過ごす時間は楽しいが、これは恋愛とは違う…と、自分に言い聞かせる。オレは囲碁棋士だ、碁よりオモシロイものなんてない。彼女とのことは…ただの息抜き、だろ?オレはタイトルを獲るのが先だ。こんな気持ち、持っている場合ではない。だから、もし志水くんが噂で傷つくなら、オレは身を引ける…。いや、引くべきだ。一度は決意するが、星歌の笑顔や輝く目が頭に浮かぶと、抑えきれない感情が沸き起こり、葛藤が渦巻く。珍しく酔っているせいだな…考えが上手くまとまらない。オレはどうするべきなんだろうな…。だが、ただ1つ分かったことがある。志水くんの笑顔を見ていると幸せな気持ちになる。だからオレは、彼女にとって最善の1手を選ぶ。
「大丈夫だ。あの子が傷つくようなことはしない。余計な心配するな」
 緒方はグラスを握り、白川に低く言う。声には決意とかすかな震えが混じる。白川は黙ってグラスを傾け、緒方をじっと見つめていた。
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