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白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第17章 信じがたい噂と白川の忠告


 都内にある落ち着いた雰囲気のバーではジャズが静かに流れ、緒方と白川は並んで座り、グラスを傾けている。緒方の手にはウイスキー、胸の内には談話室で耳にした星歌に関する噂が重く残る。「カフェでバイトしながらタイトルホルダー狙い」「高校生なのに一人暮らし」「制服でパパ活」…真柴の軽薄な言葉と、一柳棋聖の紹介で星歌がバイトを始めた事実が、頭の中で絡まり合う。志水くんはそんな子ではない…と、星歌のピュアな笑顔や美術館での輝く瞳を思いだすが、一柳先生の紹介…夜道の制服姿… と、疑念がどうしても拭いきれない。ただの知り合いの娘だ、オープンキャンパスだ、真柴の戯れ事だと自分に言い聞かせるが、モヤモヤが胸を締めつける。
 先週、カフェで彼女のいつもの笑顔と忙しそうな仕事ぶりを見たが、噂の真偽を確かめるなんてできなかった。そのことに対しても、自分が彼女を信じきれないことにも苛立ちが募る。
「ここ、いい雰囲気だろ?」
 白川がグラスを掲げる。
「そうだな」
 緒方は頷き、酒でこのモヤモヤを晴らすか…ウイスキーを一口飲む。注文していたつまみが揃うと、白川が軽い口調で切り出した。
「志水くんも、緒方ほどじゃないけど顔に出るよな。印象派展、絶対好きな男と行っただろ」
 どうして今そんな話を…?心臓がドキリと跳ねる。
「どうだろうな」
 緒方は平静を装ってごまかす。白川はグラスを揺らしている。
「一緒に行ったの、お前だろ?」
 白川がはっきりと言い切り、緒方は内心でうろたえる。
「何を言っている?」
 冷静に返したつもりだが、声にかすかな動揺が滲んでいるのを緒方は自覚する。
「オレもあの日、美術館に行ってお前たちを見たんだよ」
 白川は緒方の目を見て言った。その視線は穏やかではあるが、本心を確かめるようでもあり、緒方は思わず目を逸らす。
 見られていたのか…と、緒方の頭に印象派展の日の出来事が頭に浮かぶ。隠すような関係ではないが、白川にはどう言うべきか…緒方は考えていた。
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