第32章 「特別な存在」になるホワイトデー
「なあ、夕飯、一緒に食べるか?」
「え、いいんですか…?」
星歌が目を丸くして聞き返す。また敬語かと、緒方はクスッと笑う。
「敬語はなし、な?」
「あ…はい、じゃなくて、うん…」
慌てて言い直す姿に、本当に愛らしいな…と、緒方の心があたたまる。
「オレたち恋人だろ?いいに決まっている」
笑ってキッチンへ向かう。キッチンで、簡単なものでいいよな…と、パスタを茹でる湯を大鍋で沸かす。星歌に作ると思うと少し緊張するな…と胸がドキドキする。
「カルボナーラとサラダでいいか? 簡単だけど」
「カルボナーラ、楽しみです!」
「お、敬語」
ベーコンをカットしながら、軽く笑って指摘する。
「え…また…楽しみ!」
星歌が頬を赤らめて言い直すのを見て、この慌て方もたまらないなと、思わず笑みが浮かぶ。
ちぎったレタスや薄切りのキュウリなどの野菜をドレッシングで和えたサラダをテーブルに並べると、星歌が手を小さく叩く。
「すごい、おいしそうです…!」
「また敬語だ」
ニヤリとしながら軽く突っ込む。
「うう、癖で…。おいしそう!」
星歌は困ったような笑顔で言い直す。こんな初々しい反応、ずっと見ていたいと、緒方は内心でにやけが止まらない。
カルボナーラも手際良く仕上げ、少し遅い夕食の時間。2人でカルボナーラとサラダを食べ始めると、星歌が少し恥ずかしそうに言う。
「精次さん、料理上手ですね」
「そうか?ありがとう。また敬語になっているぞ」
「え!あ…ごめん…上手!」
慌てて言い直す。この初々しさも「精次さん」って呼ばれるのも、たまらないな…と、緒方の心はあたたまる。
「まあ、パスタは簡単だからな。星歌の好きなもの教えてほしい。次はそれ作るから」
「え、本当…?」
「本当だよ。恋人なんだからな」
「うん、楽しみ!」
この子とこうやって過ごす時間、ずっと大切にしていきたいと、緒方は星歌の笑顔に胸がいっぱいになっていた。