• テキストサイズ

白と黒のハーモニー【ヒカルの碁・緒方精次】

第30章 大雪のバレンタインデー


 23時15分過ぎ、真っ白な雪に覆われた駅に電車がようやく到着する。緒方は慌てて電車を降り、やっと着いた…と白い息を吐く。雪は少し弱まって空には止みそうな気配が漂うが、冷たい風がコートを貫く。スマホを確認すると、星歌への最後のメッセージには依然として既読が付いていない。
 駅からマンションまでのわずかな距離を急ぐ中、もう寝たのかもな…こんな時間じゃ来ないか…と、星歌が無事ならという安堵と、会えないかもしれない寂しさが交錯する。
 マンションのエントランスに差しかかると、ベンチに小さく座る星歌の姿が目に入る。コートにミトン、マフラー、レインブーツで雪対策をしているが、濡れた髪が頬に貼りつき、肩が小さく震えている。こんな雪の中で待っていたのか…!と、緒方の心が締めつけられる。    
 星歌は緒方を見つけると、冷え切った顔に穏やかな笑みを浮かべる。
「緒方さん!おかえりなさい、お疲れさまです」
 この子、こんな時間まで…オレのために…。そして、こんな笑顔で迎えてくれるのか…。胸が一気にあたたまるのを自覚する。
 しかし、こんな冷え切ったまま志水くんを帰すわけにはいかないぞ…と、一瞬迷う。一人暮らしの男の家に入れるなんて、いいのか…?葛藤が渦巻くが、風邪を引かせるほうがダメだろ…と、星歌への気遣いが勝る。
「冷えただろ。家で少しあたたまっていけ」
緒方はクールに言いながら、エントランスのドアを開ける。
「え、いいんですか…?」
「いいから、早く」
 驚く星歌に緒方は短く促す。少しの時間あたためるだけだ。やましいことはない、そう自分に言い聞かせる。
 エレベーターに乗り込むと星歌の荷物が目に入り、バレンタインか…と、心が高鳴る。雪の粒がコートに残る中、緒方の部屋のドアが静かに開いた。 
/ 143ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp