第28章 バレンタインの準備
星歌は迷った末、人気ブランドのビターな味わいのチョコを選ぶ。シンプルで大人っぽい黒のパッケージに、これなら似合うかも…と、緒方のクールな雰囲気を思い、納得する。あのクッキー、食べてくれたかな…と、インスタントコーヒーと一緒に渡したクッキー記憶がよぎり、胸があたたまる。
「よし!次はプレゼントだよ!」
明日美は目を輝かせて、再び張り切る。明日美、本当にノリノリだな…と、星歌は少し戸惑うが、頼もしい気持ちのほうが大きい。
「予算は? 何か目星つけてる?」
「いつも車に乗せてもらったり、お茶ごちそうになったりしてるから、そのお礼も兼ねたいな…」
「いいね!お礼プラス気持ちを込める感じ!」
2人はメンズの服やバッグが並ぶフロアへ移動し、ショーウィンドウをぶらぶらと眺める。
「緒方先生って何が好きなんだろう?」
「…囲碁…?」
「それ、さすがにプレゼントには無理でしょ…。男の人のプレゼントって難しいよね。母の日はすぐ決まるけど、父の日はめっちゃ迷うもんね」
父の日みたいに選べばいいのかな…?じゃあネクタイとかカフスとか…?ふと、星歌の足がショーウィンドウの前で止まる。そこには碁石のような白と黒の石をあしらったネクタイピンが、控えめな光沢を放ちながら飾られている。緒方さんといえば囲碁だし…これ、似合いそう…。星歌はネクタイピンをじっと見つめている。
「それ、めっちゃいいじゃん! 緒方先生っぽい! 絶対これにしなよ!」
明日美の助言もあり、星歌はネクタイピンの購入を決める。だが、ギフト用にラッピングされたボックスを見ると、受け取ってもらえるかな…と不安が押し寄せる。
「受け取ってもらえなかったら、どうしよう…」
「大丈夫だよ!もし万が一ダメだったら…一柳先生にあげれば?」
明日美の言葉に星歌は思わず吹きだす。確かに伯父さまなら喜んでくれそうだけど…。
「さ!今度はお茶しながら具体的な計画立てよう!」
明日美の提案により、2人でカフェに入ることになった。