第28章 バレンタインの準備
街は、バレンタインのデコレーションで華やかに彩られている。ショッピングモールやセレクトショップのショーウィンドウにはハート型のチョコやカラフルなラッピングが並び、友チョコや自分へのご褒美が主流になりつつも、恋する乙女たちにとって特別な季節であることに変わりはないと主張している。冷たい北風とともに、キラキラとした空気が漂っているようだ。
星歌はデパートの入り口で明日美を待ちながら、明日美も芦原先生も両想いだって言ってくれるけど…やっぱり不安だな…と、胸をざわつかせている。緒方さん、最近またカフェに来てくれるようになったけど、いつも白川先生とテーブル席に座っちゃって、なんか前みたいに話せない…と、「2人で会うのはやめよう」の言葉が頭をよぎる。何より、告白なんて恥ずかしすぎるよ…と頬が熱い。でも、緒方さんの笑顔、また見たい…。年末に言われた「キミと出かけられて楽しかった」が胸をあたためる。
合流した明日美は、星歌よりも張り切り、目を輝かせて言う。
「よし!まずはチョコ買おう!」
2人でデパートのバレンタイン催事場へ向かう。色とりどりのチョコレートブースを眺めながら、明日美が星歌に尋ねる。
「ねえ、緒方先生って甘いもの好きなの?」
「うーん、前にクッキー渡したら受け取ってくれたけど…わかんない…」
初めて2人で出かけた日、インスタントコーヒーとクッキーを渡したことを思いだす。あのクッキー、食べてくれたかな…?
「え!クッキー渡したの? ラブラブかよ…」
「ち、違うよ! 車に乗せてもらったお礼だよ!」
「ふーん、あのスポーツカーに乗せてもらうって、やっぱりラブラブじゃん!」
明日美はからかうようにニヤリ。
「もう、からかわないでよ…」
呟きながら星歌は、チョコレートの棚に目をやる。緒方さん、どんなチョコなら喜んでくれるかな…。バレンタインの甘く華やかな雰囲気に、ほのかな期待と不安が交錯していた。