第16章 気になる過去 ❦
「仁王は、ああ見えて面倒見がいい。
素直ではない分、手がかかる男だが、何卒気長に付き合ってやってくれ」
しっかりと頭を下げる姿に、お父さんかな?と、何やら盛り上がりを見せる部屋へと向かった。
みんなが囲むテーブルには、色とりどりの料理たち。
「ほい、マユちゃん」
どうぞー、と丸井が差し出す紙皿とプラスチックのカトラリーを受け取る。
「ブンちゃん、なんじゃ『マユちゃん』言うのは」
「えー?『繭結ちゃん』なら、あだ名は『マユちゃん』だろぃ?」
なあ?と聞く丸井に、そうですね、と頷く。
「だいたい、『マユ』って呼ばれてましたね」
そうかもしれんが、と不機嫌そうな雅治。
それを見ていた幸村がクスクスと笑った。
「仁王って、そういう所、あるよね。
自分は野良猫みたいなくせして、他の猫が餌をもらってるのを見た、みたいに、自分のテリトリーに入れたものにそっぽを向かれると、へそ曲げちゃうんだ。
ちゃんとあとで構ってあげればまた甘えてくるからね」
そう言って、空いていた隣に座った繭結に笑いかけた幸村。
「それを分かってて隣をキープして笑う幸村君が怖いよ」
「丸井?」
「ナニモ言ッテマセン」
(野良猫、)
使い捨て容器の蓋から中を覗くと、嫌そうな顔をして蓋を戻して遠ざける。
隣の容器を同じように覗くと、ふむ、と満足そうに近くに引き寄せた。
手に届く範囲に肉料理やおにぎりを引き寄せ、相変わらず野菜を食べない雅治。
「はい、どうぞ」
「ん、」
繭結が雅治の皿に乗せたのは、半分に割られた肉団子に挟まれた肉巻き。
「まーくん、これ、嫌いぜよ」
「これはお肉です。お肉なんです。
お肉、好きでしょう?」
「野菜...」
「見えなければ食べてないも同じです」
皿のそれを箸で差し出す繭結。
「お肉だよー、牛さんですよー」
「インゲン豆と人参がこっちを見とるっ」
「いない!いないっよ!見て
お肉さんだけですよー」
「いやじゃ」
プイッ!と顔をそらす雅治に、ダメか、と落胆する繭結。
「ここ、幼稚園?」
「ふふ。保育園かもしれないね」
これもダメ?と差し出されオリーブの実のピンチョスに、いやいや、をしている仁王を見て、微笑む幸村と嘆息する丸井だった。
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